Crystalmemento

夜 / 骨壷 / 境界線

アタラクシアの眩暈

死んだ花嫁が現れる夢の中に本当の自分を置いていくことにして、最後に見た血痕より紅い夕陽に染まる未来の放課後、微笑みかけるミューズの顔は内側から崩れて、彼女を拘束する時間と因果の魔に白く堕落してしまったが、ぼくは後ろを振り返らなければ生と死を免れることが決まっていた。それでもなにかの死の終わりに世界は分解されるのに、屋根に空を塗って、地図の上に赤い河が増水していくのを夕読みのように聞き流す。風景がひびわれていくことの、その裏側のアタラクシアが何の象徴だったかはずっと前から知っていた。ぼくが毎日留守にする短くない時間の中で世界は少しずつ修復されているはずなのに、それでも手付かずの憂鬱がなくならない。ああ、この世で最もきれいな花でさえ不幸だ。