銀河泥棒
宇宙のどこかでひっそりと咲く花。それが発する音を聞いた。それは悲しげな未来に薫るマゾヒスト的な祈りとなって、ことばとなって、ここに記された。語られた嘘でさえ理解してしまえば何かの要約となってしまう。ずっと生きているきみの幽霊はことばの裏側に棲んで、意味を操っている。
好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。
それだけがすべてである退屈しのぎに全人類はたぶらかされる。日常を切開する手術としての性現象を破壊的に盛り上げることで一瞬だけ別の世界へ逃避する。理解は恍惚を遠ざけ、未知は恐怖を照射する。
「はじまりだけ。はじまりだけが夢なのです」
これもどうせすぐ過去になる。だからいま水たまりに金魚すくいをしている。この視界のページをめくると、そこから悪霊が飛び去る。
蛍光灯に星を集めて明滅する夜の宗教。
魔法はまるで酸素のように視界のなかで光にかわっている。