クリスタルメメント

詩を書きます。

#005

教壇の机の上にブラウン管の古いテレビが置いてある。教室の中は無人だった。テレビにはいつかのこどもたちが入学して卒業していく姿が繰り返し映されている。こどもの緊張した面持ち。保護者の心配そうな顔。嬉しそうな顔。友人との別れを惜しむ声。幸福そうな人々。しかし幸福はない。本当のことを言えば教壇もない。机もない。テレビもない。教室もない。いつかもない。こどもたちもない。入学も卒業もない。それを見ている目もない。幸福はない。幸福そうな人だけがある。幽霊だ。ぼくたちの身体を使った幽霊は妊娠をそこに捧げたんだ。