クリスタルメメント

詩を書きます。

迷子願い

霧と煙の重さを比べていたときの記憶を最後に、凍ったシャボン玉のなかに生き残ってひとり。あそこにたったひとりでいるぼくはかみさまでしょうか。それとも本物でしょうか。この世で一番素敵なリトマス試験紙の青を目指して雷鳴の抜け殻とともにすべて以外を吊るします。さあ息を吹き返しましょう。気をつけるべきは女または非女のステーシー。細めの首です。酸素と酸素の子どもが最後の針の上に乗った瞬間、痛覚ともお別れです。唐突に空白を差し挟むコンシーラーのつま先のようにゼロを基準とした生命の針はマイナスに振れることも珍しくないのです。

きゃらきゃらした女子高生は生きることが背徳になるまで針を回して嘘から抽出されるはずの真実を探し回っている。崩れ落ちる夜を捨てたあたりで背後から一月が襲いかかる。プリクラ特異空間のなかで過去と未来を完璧に忘却する瞬間に血液は沸騰する。そのたびに伸びるまつげと入れ替わる性。それらが何度でも初体験できる一回性のシャッターに切断されるまでさよならをおあずけされた柑橘系のアイドルは少し渚もろくなって「生きてることを忘れてあげたい」と言い残して消えた。

消えてゆく後ろ姿に伸ばした手の先に触れた忘却からの「わすれないで」という伝言を受け取って、それにまつわる事実は昔からある民間信仰に一変してしまった。釣り合いの取れなくなったぼくはぼくを葬ってわたしになった。そして息が空と重なるくらいに生を薄めて、690秒で総括できる思い出を待つことにした。

いったい誰が自分なのかすらわからないほど気持ちがすっきりしないまま、粒の中に充満する睡眠に沈没して現実感を水星に溶かしてみたら、さよならも言わずに行ってしまった彼に夢の中でまた会った。懐かしさの続編として大衆化された彼からの誘いを素直に受けられないわたしは「もう迷子にはなれないのかな」と呟いたすぐ後で左の目から痛いほど果汁があふれた。だって月光の麻酔にかかったわたし以外、本当はもうだれもいないのだ。有り余るほどの声を封じてわたしを包むうつくしい孤独は楽園としてそこに存立していた。それでもまだ、愛は出来上がりつつある手紙となってわたしの手を動かしている。