クリスタルメメント

詩を書きます。

ねむりのちはれ

夢よりも深い落とし穴に落下した雨しずくが蒸発した瞬間、時間はどこかにいってしまった。天使はまだ円周率の牢獄を旋回している。
結果として古くなった世界のぼくは自分のためだけにぼくとお別れして、
いつまでもぼくたちは血管を流れる三途の川を渡っていたんだ。

クラスには欲望の病にとり憑かれた子が行儀のよい席に着いて懺悔の手記を綴っている。心にしっかりと鍵をかけて、あの日のことばを刻みつける。あれを発したのはなんの先生だったのか今ではもう思い出せない。
「紙を増やしたいのなら恐怖を与えなさい。あるいは希望を添えなさい」
先生は結局これしか言っていなかった。隣の優等生は涼しい顔をして手を動かしている。"洗脳された彼に洗脳されたわたしはきっとかわいい女の子だから諭吉十枚で兄と弟を取り替えっこしてわたしはきっとかわいい女の子だから首が折れてもわたしはきっとかわいい女の子だから手足を間違えてもわたしはきっとかわいい女の子だからここは童話の世界なのだわたしはきっとかわいい女の子だからわたしはぜったいにわるくないわたしはきっとかわ"と書かれた部分が彼女の脳内の寂れた駅のホームで滅びの日を待っている。内容は誰でも大差ないだろう。ことばは理性を嫌悪している。自由を制限されるからだ。真っ暗闇の空を瞬いていたいのだ。気ままに繋ぎ合わせて詩の星座をつくるのだ。やつに味方はいない。地下に横たわらせるのは思ったよりも簡単だ。

それでも幻聴は続くかぎり続くが、それはただ続いているだけだ。欠けて拘束を解かれた方の心にはなんの不都合もない。その日々の隙間から漏れだした譲られない光は憂鬱な人間の牧場にほんの少し心地よい刺激を与える。天井に張り付く嫌らしい責任者が創造性を平均化のうちに没し去る。そして、ああ今にも角砂糖から甘さだけが溢れ出しそうです。とはいえ通りすがりの宿主を駆り立てる世間話に参加する呪文の奥様に過ぎない不可能のひとつもどうにもならないのならそれははじめからきみのものではなかったのだ。

露ほどの生命が混ざり合った雨は鏡に映らないように存在している回路を通って天へ向かう。
電気信号のえんぴつが輪郭線上をやわらかくなぞって土に還るまでもない解放の先へ。
そして罪は記憶とのハネムーンにおけるもっとも楽しい時間の海に溶けてなくなる。
悪魔は落ちる。無数の天使と存在を等しくして。
全方位へ遊びを続けるのだ。
鳥は鳥に似ているのではない。
運命とはあなたのことです。
各位、理解を。