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クリスタルメメント

詩を書きます。

腰リボンの中央階段から

夢を見た。誰もいない。また目を閉じる。黒一色にノイズ。気の狂ったパレードを見ている。日常をつよく欠席して冷蔵庫で休む。猫のペンキを剥いだ紫陽花。誰かの電気信号がない。また夢を目で隠す。騙されておはよう。殺すことはないよ。便利な神を手のひらに乗せよう。

風でめくる風景

濡れた葉書が空に羽ばたき、そこからまた文字の蝶が飛び立つ。その後に来る雨上がりでさえも絶対を故意に誤植するようにできている。確実なものはなにもない。

「みなさんも逃げたほうがいいですよ」

天と地の間の人たちに向けた最後の手紙は溶けて流れる。

境界は死体のように抱きあっている。
風化するすべての不可視へ別れを告げなくてはならない。

海底に指紋をつけに行くのだ。

グラスに沈殿する小部屋

色彩が健忘した
見えるのに見えない空白
包帯に擬態する
不幸の天使

はじめまして
高級な雷の被害者たち
人格の区画整理
言葉とは

精神的な臓器から滴る血液
塗られた霊的なオブジェ
本物でないすべて
お気をたしか

猫という天国
増殖する言語から逃げた
自己を置き去りにして
扉を閉めた

視界の前座

呪いのうさぎが風解する。その降霊的な花氷からひとつずつ手折られる色のない色素の一部分へとふらつくまでの条件反射は捕まえた幼馴染の封印の日からやわらかく凍結されている。

椅子の爪時間を考慮して途切れずに鋳造される空間のあえて芸術を気取るまでもない神秘にかくれんぼしている夕暮れの天才には永遠に理解されないことを望まざるを得ないような孤独が健康な病として台頭してくる。

閉じかけた幕に念を込めて開く文明の乱れ打ちに当たって死んだこともある近隣住民からは颯爽とした当たり屋のエリートに民族衣装を何度も重ね着させる。

その運命の第四コーナーにおける母親の恥ずかしい応援によって墜落する未来が教会の入り口にあらかじめ刻印されていたことを誰も気に留めず本物などはない聖書の偽物にさえ虚無は繁茂している。

政治的仮装パーティーを聖なる無自覚の少女集団に乗っ取られて以降というもの、ゆめかわいい鎮魂のファッションショーとなってしまった感のある十二階の踊り場から見渡す世界は空気だけがミサイルの背景として存在していた。

最高度の歪みをもって存在しているぼくたちはこれを矯正することなく最高を更新し続けていくのだろう。しかし、或いはそれゆえに、何事もないことに身の危険を感じたら不安のプールサイドからもう一度旅に出るべきだ。ただし蜜になる仮設空間でエレベータのボタンは電卓になるから、虚数世界まで移動した先にある大きな桜の隠れ家ですこし安らいでくるのもいい。

不可能なものばかりが生きているベビーたちの心臓はやけに大人びていて、恍惚の灰の雪アニマははじめからそこに棲息していることがうかがわれる。何故と問うことは事実を否定するはじめてのモグラである。

自己愛でいることのできないすべてのいいかっこしいが地図のない関係性に迷い込み、そこに現れた森に消毒液をかける。

あの日、何度目かの夏を借りて、騙すことを嫌悪しながら騙される能力を高めている社会を見た。宗教的な「善い」が金銭的な「善い」に取って代わる。あれは危険のはじまりでした。後悔の嘘つきが五月雨のジョーカーをきる。濁音も浄化されていくみたいだ。

「あしただったはずの一日が目の前に現れてそこで見えるすべてがはじめてのはずなのに街並みと人間の化け物たちに抱く親近感を一定のパースペクティブで差別できるのは思い出の中にいるからだ」と証明できないあわれさを演技派の幽霊たちはきっと忘れているだけなのだ。

星は散り、人は死に損なって、少年愛は後輩と脳内の原始じみた電気信号を奪い合う。夕暮れのみなさん。それは人間ではないよ。見るものと見られるものの中心点に生きている我々は見たものすべてを夢と知りつつそれを信じないこともできる。それでも逃れることはできない夢の中の夢からシノニムと座標軸のカブトムシで監視カメラを監視する。その向こう側、その彼方を。

枝先の花嫁

girl is dead から girl is god までは、2メートルにも満たない。

思想の3パーセントをのらねこに提供するまじない師のややペットショップじみた江戸しぐさが引き摺り下ろされるスカート及びスカートへの信仰を偉大なる死へと転居していつも似通った不在を永遠づけている。

終わりはサイケなロジックで編み込まれた一直線の透明な迷路だった。

背徳のガトーショコラやエルメスモンブランを掘り進む欲望と口とフォークの三位一体が真実を詐称する時間を考慮するとおよそ一時間ほどで五分後の世界にたどり着く。時計に鍵を掛ける。時間が滲み出してこないように。これ以上、関係が進まないように。
それでも銀座以上のヴァニラアイスにノイズが混じりだして、伸び始めた蛍光塗料のエーテルをもはや見逃すことはできない。膨張した不安をなでる。

「美しいと思わないと、美しいものはどこにもないんだよ」

この声がどんな世界にもうるさくなりませんように。

箱から飛び出した夜が膨らんで不思議の国にきのうの花を添えた。

「人類が絶滅した後にもう一度会ってください。それですべて諦めます」

もっとも遠くなるはじまりにマイナスの重量を求めて自分の体から逃げ出した手足と離れたがらない右手が彼の左手をつかむ。
体温が欲しい。血液が欲しい。幽霊が欲しい。
形代の自己励起する後遺症としてアイデンティティの凧糸を夜の死体と子猫が道連れの旋律に巻きつける。

「流れない涙に優しさは届かない」
「さよならを鳥かごから逃がして!」

そして少女は顔も体も持たないままかわいい服を着て立っているのでした。

置き去りにされた会話

目配せをひとつ
微笑みをひとつ
ことばをひとつ
相槌をひとつ
孤独をひとつ
もうひとつ

氷ロザリオの融解

あやとりに捕まって上下する女生徒の胸元にさりげない流れ星のような雨が、ひとつだけ固形の粒で落ちてきた。ゆくゆくは思い出になる肌の感触へと懺悔して見つかったのは粉々に愛した事実だけでした。

「これから最悪の願い事をかなえようと思う」

女生徒はストロベリーのフリルに立入禁止を掲げつつ、それでも入ってくる人を待っている。

「絶望の愛は液体である」という証明を買いにコンビニに向かう途中で行方不明になった世界と恍惚の狭間で狐のお面をした子を見た。その子とわたしの間に横たわるやわらかい日曜日を純個人的な電子音楽ミニマリズムが黒猫で遮ってぼんやりと生きていた事実をときめかせた。幼少期に好きだったアニメ映画のように思い出す過ぎ去った時代の情景とそこにいたはずの自分自身の背後に差し迫っていた危険な状況が夢の中で出会った友だちのように寂しく突っ立っている。わたしは知っている。その子の小さいカバンの中には雨が降っている。あれは悦楽。あれはあの日のわたしでした。

そういうことだった。必要な道具は目の前で勝手に揃ってしまった。狐と自我である i の虚数が結びつく等式を代入して液体の証明に縁談を申し込む。そしてその解を剥製にした後で、一日の終わりと始まりをつなげる儀式の霊的効力を世界中すべてに満遍なく行き渡るように、安らかさの偶像と並んで目を閉じた。消えますように。消えませんように。

午前零時で止まっている時計。時間は浄化されたのかもしれない。

ひとり残されたぼくは、ベッドの中で握られた結び目が解けるようにして人形化した恋人の、ことによると半日以上にも及ぶこともあるあまりに無防備な夜遊びの後を追ってそれほどまでに楽しい夢の楽園へと、もっとも影響を受けたなんでもない温もりの空間から寝言と寝返りだけを頼りにもう二度と配達されることのない初恋のはじまりの感覚を探しに行くことにした。明と暗を中和して。